伊坂商事株式会社~社内恋愛録~
「私今日、誕生日なの」


真顔で言う篠原班長。

ほんとに、まったく、この人は。



「そういうことは早く言え」

「だって、さっき思い出したんだもん」

「ありえないですよ、さすがに。大事なことでしょうが」

「そう? じゃあ、プレゼントちょうだい」


手の平が差し出される。

親にお小遣いをねだる子供みたいな顔だ。



「何がいいですか?」


諦め半分で聞いてみたら、



「んー。とりあえず癒しとか?」

「カレシ?」

「癒し」

「飯?」

「癒しだってば」


篠原班長は呆れたように笑った。

だから俺も笑ってしまう。



「俺といるだけであんたもう十分癒されてるでしょうが」


篠原班長は、「自意識過剰だ」と、また笑った。


こんなに笑ったのなんて、久しぶりなのかもしれない。

何だかもう、それだけでいいと思った。



ゆっくりと、時間をかけて、俺たちは俺たちなりの形を見つければいい。







END

< 34 / 124 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop