束縛の指。【密フェチSS】
本編
「なんて言ったっけ、短いバナナ」

ゼミ仲間と立ち寄った居酒屋で、右隣の男にそう尋ねられた理香は、首を傾げながら「モンキーバナナ?」と答えると「それだ」と自分の指を見ていた男は小さく頷いた。

「人の指見て、なんかとバナナみたいって笑った女子がクラスにいてさ」
「そう」
「そのなんとかバナナのなんとかが思い出せなかったんだ。すっきりしたよ」
「それはよかった」

笑いながら説明された質問の意図に、理香も男と一緒になって笑った。

「男の指ってアレの象徴なんだぜ」

2人の対面の男が会話に割り込んできた。

「指でアレが判るんだとよ」
「薬指で判るんだっけ?」

理香の左隣の女も面白そうに参加してきた。

「俺のどうよ?」

右隣の男は自慢げに左手の薬指をビシっと一本突き立てた。

「太くて短いモンキーバナナ」

左隣の女の遠慮の欠片もない言葉に「細くて短いよりマシだっ」と右隣の男は言い返して、皆、笑い転げた。

それ以来、理香は短いバナナを見ると吹き出してしまい、太くて短い薬指には目が吸い付いて、不埒なことを妄想してしまうようになった。




披露宴後の二次会も終わり、新居で夫と2人きりになった理香は、銀色の指輪を嵌めた夫の薬指を嬉しそうに眺めていた。夫はそんな理香に、顔をにやつかせていた。

2人が付き合うことになったきっかけは、この指だった。

夫は会社に出入りしていた営業で、指を見た理香は「太くて短い」と呟いてしまった。「は?」不審がる声に「指が」と笑って誤魔化したが、親しくなってから『太くて短い』の逸話を話すと「確かめさせてやるよ」と言われ、確かめた結果の大満足が今日に繋がった。

指輪を嵌めた太くて短いその指に「私のものね」と言う理香に「ナニが?」と意味ありげに夫は尋ねた。

その指には子どもの頃に作った小さな傷跡がある。

今夜はアレにもそれがあるかたっぷり確かめさせてやるからなと囁くその声に、理香の顔は赤らんだ。
指を出して「練習するか」と言う意地悪な声に、仕返しとばかりに理香はその指に歯を立て噛み付いた。

「痛いよ。本番でそれはなしだぞ」
「さあ。どうしよう?」

傷がなかったら噛んで傷跡つけちゃうかも?
うふふと笑う唇をぬるりと撫でる薬指に、理香はチロリと舌を這わせ口付けた。
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