激しく愛して執事様 SWeeT†YeN ss集


 気がつきたくなかった。



 俺は、彼女が好きだ。一人の女として好意をよせているのか……




 小娘、変人と罵っていても、俺は彼女が好きだったのか……



 女を自分のものだけにしたいなんて感情、自分に備わってるとは思ってもみなかったな。



 彼女は俺の主で、俺はただの使用人。この関係は、契約の上でなりたっているだけで、俺は使用人を辞めてしまえば彼女には近づくことすらできなくなってしまうというのに……



「柏原は、いつもドレスを選んでくれるのよ」


 お嬢様が、俺の腕に手を絡めてきた。


「カシワバラが?」



 刺すような冷やかな敵意の視線がイーニアスから放たれる。



「そうか、マリカのバトラー(執事)はとても有能なんだね?」


 だけど、すぐにその視線は暖かなものに変わり、イーニアスは朗かに微笑む。


「有能なバトラーに飾られた君のドレス姿……とても楽しみにしているよ」


 片膝をつき蒼の瞳で上目遣いを送りながら、そっと手の甲に唇を落とす紳士なイーニアス。


 スッと立ち上がり、俺の手を握り「今夜が楽しみだなカシワバラ」と耳元で囁き、息を吹きかけてきた。  



 殴り飛ばしたい気持ちをこらえて、その背中を見送る。









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