激しく愛して執事様 SWeeT†YeN ss集


「お嬢様、どうかお気を楽に何なりと御用を申し付けください」


 彼女は、それはどうかしら? と俺を卑下したように鼻を鳴らした。


 コイツ……一筋縄ではいかないな。


 でも、構うものか。要は金だ。金が稼げれば問題ない。

 そっちがその気ならば、関わり合いなど持たずに職務をこなせばいい。



「では、さっそくですが本日はおばあ様のお見舞いに行かれるとのことでしたので、車の準備をして参ります」


 日本で免許を取得できたのも、彼女の父親の計らいだ。

 安全運転を怠らないようにと、免許は一般のものより高度な客車を運転できるものを取得するよう命じられていた。

 運転経験のあった俺には、然程難しくはないことだ。


「嫌よ……初対面の人が運転する車なんて乗りたくないわ。運転手の高橋さんはどうしたの?」


 高橋とは、先代から紫音家の運転手をしていた人だ。


「高橋は、高齢により安全のリスクが高いとの旦那様の判断です。本日より私が運転手を兼ねるよう、旦那様より仰せ遣っております」


「いやよ! だいたい貴方誰なのよ?」



 このまま縛りつけて無理矢理にも従わせてしまおうかと頭に邪の念が過る。


 けれども、小さくため息を漏らし自分の中の最大級に優しい微笑みを彼女へ向けていた。


時間は、たくさんあるのだから……


「柏原と申します。先ほども申し上げましたが、本日より貴女の執事です」


貴女に拒否権はない。
その意味が、わかるかな?

お嬢様。





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