笑顔の向こう側 ~先生とわたしの軌跡~
『あーっっ。教室に
英語の教科書忘れたぁ』

夕日でオレンジ色に
染まった廊下で
気が付いたわたし

『取ってくるから
玄関で待ってて!』

とみどりに言って
教室に走った

階段を駆け上がり
教室は目の前…
ってところで
変な感覚に襲われた

教室に人の気配がした

誰?

こっそり覗いてみると
そこには先生とクラスの莉子ちゃんがいた

莉子ちゃんは
わたしと違うタイプの
おっとりした女の子

女のわたしでさえ
守ってあげなきゃって
思ってしまうほど

何で先生と
莉子ちゃんが居るの?

何をしているの?

しかも、莉子ちゃんは
泣いていた

先生は窓から夕日を
眺めていた

背中しか見えなくて
先生の表情は
わからなかった

莉子ちゃんが
泣いていた理由…

聞かなくてもわかる

わたしも同じだったから

涙が出てきた

先生にフラれた
あの日を思い出した

英語の教科書の事
なんか忘れて
みどりが待つ
玄関に走った

無我夢中で走った

わたしの顔を見た
みどりは、驚いていた

当たり前だよね

教科書を取りに行って
泣いて戻って
来るんだから

『どうしたの!?』

みどりの声が
1トーン高くなって
いるのがわかる

みどりの言葉に
何も言えなくて
ただ泣いていた
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