初恋-はつこい-
詩織の中で

あの噂がまだ尾を引いているようだ。


恋敵を見るかのように真由を見ている。


「ねぇ、詩織ちゃん。

 まだ私のこと……」


真由の言葉を遮るように

詩織は怒鳴った。


「だから先輩!

 お兄ちゃんには関わらないでください!

 “私の”大事な

 お兄ちゃんなんですから!」


そう言うと詩織は手にしている楽譜を置き、

素早くその場を走り去った。


校内では噂が和らいだとはいえ、

まだ詩織には根深くあるのだと再認識し、

真由の心は深く沈んだ。


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