114歳の美女
 智也は失望した。

 (僕の気持ちはわかっても、臍の緒の件は許してないか)

 (鴨川のように、ゆったりとみんな水に流してくれれば。もう一度、ここでプロポーズして、結婚を約束させるつもりだったのに。まだ、時期尚早か。次の機会にするか)


 智也は結婚の申し込みを思い止まった。

 「うちはそろそろ失礼します。では、お大事に」

 ときは智也の心を読んだのか、それからすぐに帰って行った。

 「四条大橋から飛び下りても、まだたらないのか。冷たい人だ」


 智也はときの後ろ姿に、聞こえるか聞こえないか、わからない位の声を掛けた。

 ときは振り返る事はなかった。

 聞こえたか、聞こえなかったか、智也にはわからなかった。






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