114歳の美女
 「無い言うたら無いのや」

 「ええ加減にし」


 吉のは見えない役人に向って、悪態を付いた。



 高齢福祉課の星田智也は、村島吉のから色よい返事を貰う事が出来ず、少し落胆していた。

 「やっぱり臍の緒は無いのか」

 「本人確認はどうしよう」


 臍の緒が無い事も予想していた。が、実際に無いとわかると、智也はショックを隠せなかった。


 「こうなったら本人に当たるか」


 最後の手段に訴える他無い、と智也は腹をくくる事にした。


 「臍の緒の話題を出す為には、ときともっと個人的に親しくならないと・・・」


 智也は思案を重ねていた。


 「急がば廻れ。根気良く会う事にするか。その内に道も開けるかも」


 『café昔昔』に頻繁に通う事で道を開こう、と智也は考えていた。









 
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