【フェチSS】
“観たら惚れ直す”


そんなことは知っている。
きっと誰よりも。


ベッドの上で囁く甘い言葉より、深い口づけの水音より、熱い吐息より、ステージの上でしか聞けない彼のRの音にあたしは心底惚れている。


彼の隣まで来なきゃ知ることのない音よりも、誰でも聞こえるあの音がいいなんて皮肉だけど。


この舌が欲しい。あのRの音を生み出す舌だから。


あの音を聞くと、彼の舌が欲しくなり、彼の舌が欲しいのは、あの音を出す元だから。

ぐるぐると回る欲望ごと彼の舌に絡めて。


あたしは何も知らないふりをする。物欲しそうな女の顔は絶対に見せない。

他の女みたいに彼に飽きられないように。



ステージの上にいる彼が一番好き。

彼には気づかれないようにフロアの一番後ろの暗いところで、欲望剥き出しで見つめるのも悪くない。



ベッドの中で熱い身体を感じながら。

“ステージに上がって、早くその舌で、あたしを誘惑して”

そう願ってやまない。


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