分かんない。
揺らぐ気持ち



段々と蒸し暑くなる日々。
同時に長い夏休みも近付いてきた。
川上とは全くといって良いほど
話していなかった。
次第に私の頭も、圭祐で
いっぱいになっていった。

「美佐、明日テスト最終日だけど
テスト終わってから
カラオケでも行かねえ?」

いつものように圭祐は
暇さえあればデートに誘ってくれる。
こういう事はマメで
彼のそういうところも好きだ。

「いいよ、カラオケかぁ。
何歌おうかな。あ、
たまには友達と一緒でもよくない?」

だけど圭祐はつまらなさそうな顔をする。

「え〜?俺美佐と2人きりがいい〜」

子犬のように甘えた声で嘆かれる。
最近はもう慣れたのか、
こういう声を聞く事が多くなった。

「分かった、2人きりで行こ」

私は心からの笑顔を見せた。
それに応えて、圭祐も笑顔を返す。

「やったあ!
テスト終わったら、そのまま行かねえ?
1秒でも長く美佐といたいんだよ」

私も出来るだけ長く圭祐といたい。
私は明日、金を学校へ
もっていく事にした。

母には昼食は要らないと断り、
金の入った財布を、
鞄の中に入れて圭祐と学校へ向かった。
圭祐が全部おごると
言っていたけれど、
私は奢られ慣れていないので
結局金を持ち出してしまった。

「ええっ!金持ってきたのかよぉ、
ははは。逆に気を遣ってしまったんだな、
悪かった。礼儀正しいんだな、美佐は。
でも俺が払うからさ」

圭祐はそう言うと、
泣いている子を慰めるかの様な様子で、
私の頭をぽんぽんとした。
最近の話だけれど、
もう圭祐とは付き合っている事を
公開する事にした。
そのせいで、今の光景を見た
男子や女子が、ざわざわと響めく。
その中の元気一杯な男子は。

「ふーっ!田所と神埼熱いぞ!
見せびらかすとか
どんだけ愛しあってんだよ!
分かったから他のとこでやれよぉ、
バカップルぅ〜!」

ごもっともだ。
私は元々そういう人でもなかったので、
今更我に返り、赤面してしまった。
けれど。

「良いだろ?でもお前らもいつかは
俺らみたいになるんだからな?
俺らはちょっと早いだけ」

なんて圭祐は言い訳をしていた。




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