《短編》空を泳ぐ魚2
「清水!
やっと見つけたぞ?」


睡眠時間も終わり、廊下をフラフラと散歩しているさ中、

あたしを呼び止める声が聞かれた。


だけど聞き覚えのあるこの声に、ため息と共に仕方なく顔を向ける。



「…何よ、副担任。」


あたしの言葉に副担任である岡部は、わざとらしい笑顔を作って向ける。


本当は顔が引き攣ってるのがバレバレなんだけど、

面倒なので、あたしがそれを教えることはない。



「宿題にしてたプリントのことだよ、プリント!」


「…それが何?」


「いつ出してくれるのか聞いてるんだけど。」


手に持っているそれの束を目の前に出されあたしは、

長いため息を吐き出しながら岡部の言葉を遮った。



「嘘つき。」


「―――ッ!」


あたしが呟いた言葉に岡部は、一瞬動きが止まって。


それを見逃さなかったあたしは、その隙に背中を向けた。



「あっ、おい!」


ハッとしたように岡部は声を上げたが、あたしの足を止めるまでの効力はなかった。


まぁ、アイツの自業自得なんだから、反論さえも出来ないだろう。



あたしとあの教師の関係。


利害関係で、体を重ねること。


アイツはそれだけじゃないっぽいが、あたしの知ったこっちゃない。


何よりアイツは、嘘つきなんだ。


あたしの一番嫌がることを、しかも陰でコソコソとやっていたのだから。


魚は食べない、と。


約束したのに破ったのだから。


無視を続けて一週間。


毎日こうやって何かしらの理由をつけては、あたしに話しかけてくるのだ。



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