《短編》空を泳ぐ魚2
「ねぇ、誠。
卒業出来たら、どーすんの?」


「したら、だろ?
不安を煽ること言うなよ。」


いつも通りにバイトの帰り、ライブに出ていた誠に送ってもらう。


不意に聞いたあたしの言葉に誠は、一度前置きをしてから言葉を続けた。



「まぁ、俺が卒業しても、タクちん来年まで専門あるしさ。
タクちんが卒業するまでは、フラフラしながらギターの腕上げるよ。」


“みんなでそう決めた”


そう付け加えた誠に、あたしは何も言えなくなって。


誠の瞳は、強く将来を見据えているのだろう。


とても、見ることが出来なかった。



「それより、問題はセナだろ?
マジそーゆー話したことねぇけど、進路とかどーなってんの?」


「―――ッ!」


どいつもこいつも、人の悩みをストレートに口にしやがる。


決まってたら、とっくに言ってるってのに。



「…漁師にだけは、なりたくない。」


「それ、前も確か言ってなかったっけ?
お前、何か恨みでもあんの?」


誠の言葉にあたしは、頬を膨らませた。



「まぁ、具体的に決めるより、まずは漠然と好きなもの考えろよ。
行きたい方向とかさっ!」


そう言った誠は、聴いたこともないようなメロディーの鼻歌を混じらせた。


きっと、新曲なのだろう。


誠のことは馬鹿だとしか思わなかったが、その考えは訂正しなければならない。



「…アンタ、格好良いね。」


「ハァ?!
セナ、毒キノコでも食った?!」



ごめん、訂正の訂正だ。


やっぱ誠は、どこまで行っても馬鹿決定。



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