《短編》空を泳ぐ魚2
「…あの、昨日はすいませんでした…」


そう小声で、桜井先生は俺に向けた。



「いえ、僕の方こそすいませんでした。」


笑顔でそれだけ言い、何か言われるより先に教科書を持って立ち上がった。


この女さえ居なきゃ、俺はアイツを捕まえることが出来てたかもしれないのに。


だけどもぉ、何を言っても後の祭りなのだろう。


俺がどう思おうと、清水にはあの男が居るんだから。





本当にもぉ、俺たちは終わってしまったのだろう。


そんな風に思わされる日々ばかりが過ぎて。


いつの間にか、体育祭になっていた。


若い教師連中は、どこまで行っても準備だの片づけだのでパシられて。


だけど、桜井先生と話さなくても良いのだと思うと、少しだけやる気にもなれた。


あんな女の機嫌を取る余裕なんて、今の俺にはないから。



いつも必ず、視線を向ければその先に清水が居て。


すぐに見つけてしまう自分が、嫌で嫌で堪らなかった。


午前中の玉入れにだけ出た清水は、

突っ立ってたかと思うと突然、玉を拾い放り投げて。


見事に入ったかと思えば、そのままカゴを見つめ続けていた。


その視線の先に、何を思っているのか。


そんなことばかり、考えてしまう。




「あら、岡部先生!
ちょうど良かったわ!」


俺を呼び止める声に顔を向けると、小走りな養護教諭のババアが近付いてきて。


太っているからなのか、息を切らしているのが笑える。



「…先生、清水さんのクラスの副担任でしたよねぇ?」


「えっ、それがどうかしましたか?」


そう言われてみれば、先ほどから清水の姿が見当たらない。


養護教諭から出た名前だけに、嫌な予感がして。


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