僕の可愛いシロ [短編]
 ノソノソとベットから這い出て、床に転がっている黄色い小さなゴムボールをシロの方へ転がせた。

 シロは待ってましたとばかりに、嬉しそうにそのボールを掴み、急いで駆け寄ってきた。
「シロはいい子だな」
 あまりの可愛さに僕の顔は自然とほころぶ。頭を撫でてやると、シロはもう一回とおねだりするように目を輝かせた。
 僕は苦笑いしながらも、満更ではない気分になる。

「仕方ないな、もう一回だけだぞ?」
 そう言いながらも、あと二十回は繰り返されるであろう事を僕は知っている。シロは、このボール遊びがお気に入りだ。

 いや正確に言うならば、僕との、ボール遊びが大好き、なはずだ。


 シロは最初、ついては来たものの僕に対して怯えにも似た警戒心をかなり持っていた。近付こうとすると、ビクッと体を硬直させ慌てたように部屋の隅っこに逃げ込んでいた。
 しかし、元々人懐っこい性格なのだろう。三日も経てば、部屋に置かれた砂場で排泄出来るようになり、僕と同じベットで寝るようになっていた。

 僕がシロを必要としているように、シロもまた僕を必要としている。

 そう信じて疑わなかった。



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