ドッきゅん!


「しょうがねぇだろ。お前一応女みたいだし」

「一応!?」

「いちいち叫ぶな、ドジっ子。いいから早く乗れ」

「お、おんぶ……ですか?」

「悪いか? さっさとしねぇと置いてくぞ、ノロマ」

「す、すみません……」

立ち上がろうとして、手に力を入れたら、掌にも痛みが走った。

「つぅ……!」

見てみると、擦り傷ができていた。血も出ている。

「……なんだよ、んなとこまで怪我してんのか?」

「あ、いや、このくらいなんともな、いっ!?」

私が手を引っ込めようとすると、その手を掴んで、突然傷口を舐め始めた。

「やっ、何すっ……!」

「舐めときゃ治るって言うだろ」

「だからって……! べ、別にやらなくてもぉっ……!」

初対面の美少年が、自分の怪我を舐めているという異様なシチュエーションに、変に胸が高鳴っている。

「んっ……もぅ、いいですからっ……!」

ドキドキしすぎて、うまくしゃべれない。身体が急に熱くなった気がする。

「ほんとっ、大丈夫ですっ、てばぁっ……」

「フッ、何だよその声、感じてんのか?」

口を離したかと思えば、次はこんな変態発言。この人、きれいなのは顔だけだ! 絶対にそう!

「バカ、変態、エロ眼鏡!」

私は、もうこの人に対する怖さなんてものは微塵も感じず、パシンッと、私の手を掴んでいた手を叩いてやった。

「やめてって、言ったのに……!」

キッと、男の人を睨んでやった。ほんの一瞬、男の人の顔が驚いた表情を見せた気がしたけど、すぐに先程から何度も見せている意地悪な顔に戻り、後ろを向いた。

「わかったから、乗れ」

あ、そういえば、送ってもらうんだった。怒りですっかり忘れていたよ。
私は、男の人の背中に跨がった。

「道案内しろ」

「あ、うん。えっと、東口から出て……」

男の人は、私をおんぶしているとは思えないスピードで歩いていく。

「お前、なんであんなとこ歩いてたんだ?」

「え、あ、えっと。たまには違う道で帰ろうかと……思って……」

「ふーん」

そっちが聞いてきたのに、何そのそっけない返事!

「そっちこそ、なんであんな猛ダッシュしてたの?」

「かくれんぼ……いや、違うな。かくれおにしてたんだよ」

「かくれ……おに……?」



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