彼女によると、俺はキリンに食べられたらしいです。
A sparkling firework


チクタク チクタク…


「ごめんなさい!二分遅刻」

「いや、正直だろうと思ってた」

「え」


地味にショック!と目の前の彼女は眉を下げた。ただいまの時刻、5時32分。


「下駄って時間かかるんだねぇ」

「ん……金魚?」


くるくると回ってみせる彼女。白地に朱の金魚が栄えている浴衣。ふう…ん、橘さんらしいけど。


「耀くん来てくれた」

「そりゃあ、約束したし」

「ふふっ、行こっか」


周りには甚平やら浴衣やらを着たカップルやちびっこ、家族が神社に向かって歩いている。


太鼓の音、笛の音、わいわいと楽しそうな声が遠くの方から響いてくる。夕暮れの夏の匂いがした。


「なんか変な感じするー」

「……なに」

「あたしね、耀くん初めて見たの夢なんだよ」


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