つかまえて。

「薔薇の香りがする」


息を止めて魅入っていた私は、そう言われて思い出した。

今朝使ったシャンプーはホワイトローズの香りだった。


「……あの、篠田君」

「あ、ごめん。吉野さんの髪、触り心地がよくて。薔薇の花びらかと……」


冗談なのか本気なのか、よくわからない言葉を残し、すっと髪を放す。


「代わりに、こっちを借りてもいい?」


その台詞と同時に、バスが急ブレーキをかけて停車する。

はずみで飛んでいきそうになった私を、彼は片腕でふわりと抱き寄せた。


シトラスの香りに包まれて、私の頬に熱が集まった途端。

篠田君はくちびるを緩めたかと思うと、魅惑的な声で妖しく囁いた。



「──やっと、捕まえた」




-END-
< 3 / 3 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:3

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

密会は婚約指輪を外したあとで

総文字数/107,698

恋愛(純愛)253ページ

表紙を見る
雪色の囁き ~淡雪よりも冷たいキス~

総文字数/39,402

恋愛(その他)84ページ

表紙を見る
BLACK TRAP ~あの月に誓った日~

総文字数/65,879

恋愛(キケン・ダーク)145ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop