運命を変えるため。

 去っていく彼女の後姿を見ながら、俺は項垂れる。明日香に申し訳ないとか、ばれたら傷付けるんじゃないかとか。
 いろんなことが頭を過ったが、何よりも。

「初めては、明日香が良かったな」

 その一言に尽きた。

 この時の俺は、赤石の予想外の行動に振り回され、気が動転しすぎていたのかも知れない。
 喧騒の向こうで一部始終を見ている人が居たことに、そしてシャッターを切る音が響いていたことに、微塵も気付くことはなかった。

 遅れて部屋に戻った俺は、出たときとは違う雰囲気を感じた。
 違和感の理由はすぐに判明する。大葉と佐藤が、手を繋いでいるのだ。

 嬉しそうに照れ笑いする佐藤と、顔には出さないが佐藤を大切そうに扱う大葉。
 二人の関係が進展したのだということは、聞かずとも明白だった。
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