ルチア―願いを叶える者


―謁見の間


「花音、こちらへ」

「う、うん…」


アルの後ろについて広間へと入る。


「あれがルチアか!!」

「ほう…見慣れない風貌だ…」

「なんでも国をいくつも救ったとか!」

「おぉっ、救いの乙女か」


うぅっ……
なんか見られてる…


なんか居づらいな……


「おい、大丈夫か」

「あ…ロイ!」


知らず知らずに俯いていた私の隣に、ロイがいた。


「貴族やら王族やらってのは、噂好きなんだろ」


「あ…ありがとう、ロイ。心配してくれた?」


「…ち、ちげーよ」


ロイはふいっと顔を背けてしまった。


あ…照れてるのかな?
ありがとう、ロイ…



「久しいな、ルチアよ。そなたの活躍は諸国の王より聞き及んでいるぞ」


「あっ…国王様!!」


国王様は私を見てすぐに笑顔を見せてくれた。


緊張してたけど、国王様が笑いかけてくれたから良かった…


「国王陛下、ルチアも参りました事ですし、話を」


国王様の隣にいたシェスがそう言いながら私に手を振ってくれた。


「そうであったな…。皆の者、静粛に!!!」


国王様の一言でざわめいていた広間が静まる。


「救いの旅よりルチアが帰還した。皆、敬意を示し、敬礼!!」


―ザッ


広間の兵達が私に向かって敬礼をする。


「わっ…」

「王の御前です。まぬけな顔をしないで下さい」



まぬけって……


「ルチアよ、これからすぐに我が国、ルアーネは戦火にのまれるであろう」


「え…?戦火…ですか?」

「いかにも。戦争が起こるという事だ」

「何故…」


ルアーネは諸国と平和条約を結ぶ争いを何よりも好まない国。


一体何が理由で…


「帝国ガルディアが国狩りを始めたのだ…」

「国…狩り……?」

「国を狩り、狩った領地を自らの領地とする悪役非道な所業ぞ」


帝国ガルディア……
ルリを閉じ込め、ルリの心を壊した国…


自然と怒りが沸き上がる。

でも…始めはお父さんが治めていた国だ。


複雑だな……






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