桜が求めた愛の行方

11.親友達

『どうしたんだ、これ?』

遅れてきた零士は個室になってる
VIPルームのソファーに酔いつぶれている
勇斗を珍しげに見た。

『崇、説明してやれよ』

蒼真は新しいグラスにウイスキーを
注いで、零士に渡した。

『結婚式でさ、あーんなに鼻の下伸ばしてた くせに、もう離婚らしいぜ』

崇は面白そうに笑って、
乾杯と零士のグラスを鳴らした。

『ざけんな!誰が離婚するって言った!?』

ガバッと勇斗が起きあがった。

あれから数日が過ぎた。
さくらのいる家にまっすぐ帰る気になれずに、勇斗は親友達を呼び出した。

遅れてきた岬零士《みさきれいじ》は
海外にいくつもの支社と工場をもつ
衣料メーカーの御曹司。
勇斗とは幼稚園から一緒で兄弟も同然、
さくらや真斗とも昔から仲良くしている。

建設業界最大手の加嶋の息子、
加嶋崇《かじまたかし》は初等科で初めて
喧嘩して以来、一緒に危ないこともしてきた
悪友でもある。

そして自分勝手な3人をいつもやんわりと
まとめているのが、
母方の祖父が書家の人間国宝で、
父親は世界的に有名な陶芸家である
結城蒼真《ゆうきそうま》。


『さくらちゃんと何かあったのか?!』

零士は勇斗に向かって言うが、勇斗はぶすっとしたまま、酒を煽った。

『その前にあの女が現れたらしいよ』

結局、蒼真が説明をする。

『あの女?』

『美那だ』

崇が面倒臭そうに言った。

『どうせ勇斗が結婚したのを聞いて、
 慌ててもどってきたんだろ?』

『おまえは昔からあの女が嫌いだったな』

『あの女のすることは、全部計算ずくって
 感じだろ?そもそも勇斗はなんであの
 したたかな女が良かったのか、俺には
 まったく理解できないね』

『それで?』

零士は蒼真に続きを促した。

『やり直したいって言われたらしい』

『馬鹿な!今さら!』

3年前に荒れ果てた勇斗に付き合った零士は
怒りを露にする。

『だよな、結婚している男にそんなことを
 言うなんてどんな人間だよ』

崇も吐き捨てるように言って酒を飲んだ。
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