桜が求めた愛の行方

3.隠された大きな秘密②

どれくらいそうしていたのだろう。

喉が枯れて上手く声がだせない。
水が飲みたい。

テーブルの上のカフェオレボウルを見て、
慌てて玄関へ走りドアを開けた。

『ずっとそこにいたの?』

さっきまで大声で泣いていたのを
聞かれたと思うと恥ずかしい。
田所はタバコを携帯ケースに捨てると、
何も言わずにさくらの頭を撫でた。

『出直します』

『いいえ、平気よ。こんな声だけど』

掠れた弱々しい声の自分を笑う。

『どうぞ、入って。カフェオレ入れ直すわ』

田所は黙ってそれに従った。

『さて、何から話したらいいのかしら?』

さくらがつくったマカロンを彼は
美味しそうに食べている。

『いつ、どうやって?誰から?
 このことをお知りになったのですか?』

『いつ…悪夢の食事会から…
 ああ、あの婚約食事会の事よ、
 あの日から数日後だったかしら、
 佐伯のおじ様がお祖父様の所に来て……』

『待ってください!!
 会長からこのことを?!』

『いいえ、そうじゃないの。
 あの日おじ様は……そう、融資のお礼に
 来たんだと思うわ…ええ。
 その帰りにあの人が呼び止めて
 話をするのを偶然聞いてしまったの』

『あの人?』

『母の事よ』

『さくら様……』

『私は感じていたのよ、父が亡くなって    ほっとしているあの人を』

『そんな事は……』

『あるのよ!!
 あの人は認めないだろうけれど、
 いつも私に誰かの面影を写していた
 その事は子ども心に違和感として
 ずっとここに残っているもの』

さくらは胸をぎゅっと押さえた。

『あの日やっとその正体がわかったの。
 あの人は佐伯のおじ様に自分の
 再婚の話をしていたわ、
 それを聞いて私がどう思ったと思う?』

『それは……』

『これでやっと母から離れられる、よ
 なのにあの人はおじ様に、再婚先に
 私を連れていきたいと言った。
 信じられなかったわ!
 でもそのあとに続いたおじ様の言葉の方が  もっと信じられなかった……

《今さら実の父親と暮らしたって、
 さくらちゃんの父親は藤木であることに
 変わりはない!!》

 頭をガツンと殴られたような衝撃がして
 よろめいたら、いつからそこいたのか
 まーくんが支えてくれてたわ』

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