桜が求めた愛の行方


一時間後、さくらは一心不乱にたくさんの
マドレーヌを作っていた。
もっと凝ったものを作りたかったけれど、
借りられる材料に文句は言えない。

それに《〇〇はありますか?》と材料を確認
するたびに、一目散に駆けてきて
《自分、買い出しに行ってきます!》
と言う若い彼に申し訳なくなって、
基本的な材料で作る事ができるものに
するしかなかったのだ。

それでも鬱々とした気持ちは上向きに
なってきた。
やはり料理は心を和ませてくれる。
型に入れては焼き、お皿に並べて冷ます
その作業を夢中で繰り返すうち、
いつの間にか誰もいなくなっていた。

厨房は、甘い匂いが充満している。
さくらは満足のため息をついた。

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