桜が求めた愛の行方
俺は……

『やあ!これはこれは!
 お美しい二人はどこの王室の方かと
 思いましたよ』

あからさまなお世辞に、
それ以上の思考は停止させられた。

『藤木グループの次期後継者は頭が切れると
 評判になってますよ』

両親と同じ位の年齢だろうか、
洒落たスーツを着た男が派手なドレスの婦人を伴ってやってきた。
誰だ?
不信感を露にしそうになると、
すかさずさくらが調子を合わせた。

『まあ、そうなのですか?!
 そう言ってくださるなら、
 天国の父もきっと安心しております』

『ええ、ええ、そうでしょうとも』

隣の婦人がさも大袈裟に頷いてみせる。
なんの茶番劇だよ。

『これからもどうぞ彼に
 お力添えをお願い致します、ね?』

さくらの瞳が同意しろと訴えている。
仕方なく俺も調子を合わせた。

『はい、是非ともよろしくお願いいたします』

握手を求めると、力強く握り返された。

『もちろんだとも!
 これからの藤木を楽しみにしているよ』

『ありがとうございます』

夫婦は満足げに頷いて去っていった。

『ああーもう嫌っ!!』

『誰だあれ?』

『知らないわよ!』

『はあ?だっておまえ……』

『私達は知らなくても向こうは知ってるの、
あっ、ほらまた来るわよ』

『さくらさん、ここにいらっしゃったか!
 おお!君が藤木の次期後継者だな!』

『ええ、彼が婚約者です』

『勇斗です、どうぞよろしくお願いします』
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