桜が求めた愛の行方
このホテルを所有する藤木グループの
一人娘であり、一応婚約者でもある
藤木さくら≪ふじきさくら≫から、
話があると連絡を受けたのは2日前の
ことだった。

彼女は今から3年前、大学を卒業しパリに
留学した。
余ほどの事がない限り日本に戻らない彼女とは
年にほんの数回しか会っていない。

彼女がパリへ旅立った頃、
勇斗は愚かな恋に終止符を打った。
実際にはそんなキレイな言葉では言い
表せない。
自分に怒り足掻きそこから這い上がったのだ。

『婚約者……』

複雑な事が起きそうな予感を胸に
コーヒーを飲む。

亡くなった藤木要人と勇斗の母、
佐伯美咲≪さえきみさき≫は
幼なじみだった。
そして父、佐伯 誠≪さえきまこと≫と
要人は大学の親友。

そうなると親たちが考えそうな事に
予想はつくだろう。

当人たちを無視した勝手な思惑は、
冗談半分にしか思っていなかった俺達に、
思っていなかった方向から現実となって
しまう。

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