桜が求めた愛の行方

11.前言撤回

夜明け前、心地好い腕の痺れを感じて
勇斗は目を覚ました。

乾燥した空気の薄暗い室内で、
温かいぬくもりが腕の中にいた。

無茶をした……いや、させた、だな。
まさか、こんなに夢中にさせられるとは。

目に入った鎖骨に付けた所有欲の証に
苦笑いとともに満足感が全身を駆け巡る。

彼女が寝返りを打ったので、
背後から包むように抱き寄せた。
左手の指輪が触れ、昨日の事を思い出す。

《どうせ離婚する》

元は自分が言った言葉だった。
どうしてそんな事が出来ると思ったのか、
もし過去に戻れるなら、あの日に行き
自分を思いきり殴ってやる。

しかし情況は悪くない。
周りはすでに固められているんだ。

仕方なさそうにしても、さくらが俺を避けるような事はなかったし、向けられる瞳に
勘違いではない好意を感じていた。

だから賭けてみたんだ。
その結果はここにある。

そっと丸い肩に口付けた。
あんな情熱的な面もあると知ってしまった今
離婚するなどありえないだろう。

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