桜が求めた愛の行方

7.モデル

パパの愛したザ・ホテルトーキョー。
幼い頃から沢山の思い出が詰まったホテル

さくらはこのロビーの雰囲気が好きだ

改装前は、高い天井に重厚な柱がいかにも
ヨーロッパの格式高い老舗ホテルを思わせたが、パパがソファーとテーブルをゆったりとした配置にし、クラシカルな雰囲気を生かしたアフタヌーンティーを楽しめる空間に変化させた。

パパは天才だわ。
宿泊はしなくても、ここのアフタヌーンティーを季節毎に楽しむ常連さんにより
ホテルが活気付いている。

さくらは今月の紅茶を一口飲んで
にっこり微笑んだ。


『あれ?!さくらちゃん?』

『京子さん?』

ニールがチェックインの手続きを
している間、ロビーの隅のソファーで
思い出に耽っていると京子さんが現れた。


『どうしてこんな隅で隠れているの?』

『そういう訳じゃないんですけど……』

私がいるとわかると支配人の立木さんに
気を使わせてしまうから。

『旦那様と待ち合わせ?』

『えっ?彼が来ているんですか?!』

『あら知らなかった?』

『ええ。私はちょっと友人と……
 京子さんはどうして?』

『私はほら、ベイサイドでやる
 ウェディングフェアの打ち合わせで。
 さっき終わった所よ』

『ああ……』

横浜にあるベイサイドホテルは、
今後ブライダルに力を入れていくと
勇斗が言っていた。

手始めに、幾つかのブランドやショップと
コラボしてブライダルショーを行うらしい。
京子さんにも参加をお願いしていると
言っていたっけ。

『あぁ、じゃないでしょう!
 もう!二人のせいでモデル探しに
 苦戦中なんだから!』

『すみません……』

『ねえ、どうしてもダメなのかな?』

『まーくんはああ見えて、実はとても 
 頑固なんですよ。
 今は大学も忙しいみたいで……』

『うーーん妥協したくないなぁ。
 さくらちゃんだけでもダメ?』

結局あの後、まーくんは京子さんに
押しきられモデルを渋々引き受けたけど、
本来あまり華やかな場が好きでない彼は
ショーのモデルは辞退してしまった。
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