花嫁に読むラブレター

「たくさん歩かせちゃってごめんね。この辺りは馬車を走らせることができなくて……」

「わたし歩くの好きよ。それにユンが手を握ってくれていたから、転ぶ心配もなくなったもの」

 マイアが事も無げに言うと、ユンは目を細めて声なく微笑んだ。

 ようやくユンの屋敷に辿りついたとき、辺りはすでに夕焼けの赤に照らされていた。

 普段見る夕焼けよりも、ずっと赤くて、ずっと鮮やか。広い海にゆらゆらと沈む太陽が映し出され、一本の柱のように光が延びている。穏やかに揺れる波が、ゆっくりと光の橋を沈めていき、やがて濃紺の空が辺りを包みだす。

 隣で同じ景色を眺めていたユンの顔を見ると、沈みかけている太陽の赤色が頬にさしていた。光を吸い込んだ水面のように、彼の瞳もきらきらと輝いている。

 やがて完全に太陽が沈んだ頃、ユンが何も言わずマイアの手を引いた。

 引かれるままに足を進めて、城門のような入口をくぐった先に見えた光景に、マイアは息をのんだ。

 左右対称に並列された柱の中央に、広い通路があった。柱には蔦や花がびっしり巻きつき、天蓋のように広がる花々が頭上から影を落とす。もの珍しげに辺りを見渡しながら歩いていくと、やがて広い庭園が姿を現し、さらにマイアを驚かせた。
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