BLACK




まるで、何かに取り憑かれてしまったように゙黒゙が彼に見えて仕方がない。


一瞬で姿を消した、美しい゙黒゙に―――。



隣に並んで歩く友人は、最近の芸能ニュースやらあの先生は実はどうだやら。楽しそうに会話を続けていた。


いや、会話と言っても。私の場合は相槌を打つ作業しかしていないから、会話は成立していないのかもしれない。



ただ単に、今の私の頭はアイドルだとかそんな事よりも。

あの゙黒゙の正体についてで占領されてしまっているのだ。




当然。


帰り道、友人と寄ったカフェで飲んだミルクティーの味なんて、無くて当然だった。


愚か者の私は、頭から離れない彼にもう一度会いたいと強く願っていた。また明日、あの歩道橋で会えますように、と。











―――そんな彼女を陰から見つめる、゙黒゙の存在を知る由もなかった。


綺麗に三日月を描いた唇は、愉しげに音を紡いだ。



「茅場 椿。黒はそんなに魅力的か?」



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