オリガク! -折舘東学園の日常的(恋)騒動-

「……離したあと、パイプ椅子投げないっすか?」

「その心配してたの!? 投げないから……っ上向いて!」

「上? はあ、」

「下向いてっ」

「は、」


ガツンッ――と、軽く飛び跳ねた私の頭頂部に、たぶん虎鉄の顎がクリーンヒットした。


自分もなかなか痛かったけど、回されていた腕の縛りがゆるんだ隙に逃げ出し、ちらりと虎鉄の様子をうかがう。


両手で口と顎を押さえて俯いている。だいぶ痛かったらしく、声にならない悲鳴をあげて悶えていらっしゃる。


あ……やっぱ私も結構痛い。でも、


「パイプ椅子じゃなかっただけ有難いと思ってよね!」


これだけは譲れなくて、頭のてっぺんを押さえながら言い切った瞬間だった。


「ブファッ!」


近くで盛大に拭き出したバクが抱腹絶倒する。


「アハハハハハ! ヒ、ヒ……ッも、無理……っ! 何今の! バンビ先輩センチメンタルっすか! メランコリックっすか! トラそれでなぐさめたつもりデスカッ! ハイ残念! 頭突きいただきましたぁーーー!」


ぎゃっはっは!とひとり大爆笑のバクに、すぅ……っと平常心が戻ってくる。


なんだろう。すごく自分らしくないことをした気がする。


「騒がしいなー。静かにしてよ」


声に振り向くと、ステージに頬杖をついているミーアが呆れ顔を浮かべていた。


おかえり私の平穏! スライディングして抱きつくと後退されたけど、絶対に離してやらない。


引きずられるような形でステージから降りた私は、ミーアと腕を組んで密着する。
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