ショコラ SideStory

「あたしと結婚したいの、したくないの?」


あたしの口調は完全なる怒り口調になっていて、宗司さんがたじろぐのが分かる。


「したいに決まってるよ。でも俺はまだ」


ちらり、と宗司さんが見つめたのは床。
おそらく気にしているのはそこより更に下にいるはずの親父。


「まだ何よ」

「マスターに認めてもらえる自信がない」


知るか。
自信なんて、持とうとしなきゃいつまでたっても持てるわけないわよ。


「じゃあ、どうするの。宗司さんの自信っていつつくの」

「頑張るから、もう少し待ってよ」

「もう少しっていつよ」


今日の宗司さんは弱気すぎる。
対して、今日のあたしは稲垣さんの事もあって余裕がなさすぎるのだ。


「頑張るって体の良い言葉よね。でもね、ただなんとなく『頑張る』って言ってるだけじゃ何の意味もないでしょう。あたしは今のあなたと一緒にいたいって言ってるの。今がいいの。それが嫌なら別れて」

「ええっ」


宗司さんの顔が一気に青ざめる。
ほら、あたしってばまた勢いで凄いこと言っちゃった。

でも、言ったもんは仕方がないわ。
ここはもう推し進めてしまうしかあるまい。

< 279 / 432 >

この作品をシェア

pagetop