ショコラ SideStory

しばらくはお互い無心に食べていた。
そして落ち着いたころ、思いついたとばかりに笑顔を見せる。


「古くていいなら、今すぐは無理だけどそのうち空くわよ。住む?」

「……おじいちゃんたちの家?」

「そう。今入ってくれてる人は転勤族だから、そんなに長くないって言われたの。部屋数は十分にあるし。アンタたちが住むなら家賃は格安にするわよ」


でもとるのね、家賃は。
まあ母さんだものね、そんなに甘くないか。


「でもどっちみち今は埋まってるんでしょ?」

「まあね。でもそこを終の住処にするつもりなら、今は適当なアパートで急場しのぎすればいいじゃない」

「そうね」


母さんの提案はありがたい。
親に甘えてばっかりだなとは思うけど、現実問題私達は金銭面に関しては裕福じゃないしな。


「宗司さんに言ってみる」

「そうね。あっちの意向もあるもんね」


話が終わりに向かった頃、玄関から物音がした。どうやら親父が帰ってきたようだ。


「おかえり、隆二くん」

「お疲れ、父さん」

「おう。……やっぱり帰って詩子がいるのはいいなぁ」


親父が相好を崩し、母さんが軽くムッとする。

子供の時は気づかなかったけど、この人分かりやすく大人げない。
母よ、娘に嫉妬するのはやめて。

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