ショコラ SideStory


 GW中、接客業は稼ぎ時だ。

連休最終日である今日、家の受け渡しをするのは私独り。
隆二くんに傍にいてほしかったなとか、この歳で思うのは感傷が過ぎるか。


「さあ、行こう」


現実っていつも押し寄せる波のようにやってくる。
感傷に浸っていたらいつの間にか沖に流されちゃうわ、きっと。




*



 寂しいという感情は人を弱気にさせるのか。
帰って一人で家にいるというのが耐えられそうに無く、まだ繁盛期の『ショコラ』に顔を出す。


「いらっしゃいませ……って母さん」


詩子の極上の営業スマイルが、語尾の辺りで崩れる。


「私もお客よ、詩子。つめが甘いわね」

「や、からかわないで。今日忙しいのよ」

「そのようね」


店内はテーブル席がほとんど埋まっている。
ケーキのみを買って帰る客も数人並んでいてマサくんがかかりきりになっている。


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