嘘吐きな恋人

――この間、しろとデートして……やったんだって。私は初めてだったんだから責任とってってそう泣くから。


それは千沙は何も言い返せなかったんだろうなと、好き勝手結城に言いくるめられている千沙の図が簡単に思い浮かぶ。


たぶん、嘘だろうなと俺は分かっていた。

城井がもし結城に手を出したいと思っていたんならもっと早い段階で上手くやっていただろうし、そもそもあんな面倒くさそうな女にわざわざ手を出しはしないだろう。


だから本当だったら俺はこう言えば良かったんだ。

そんなん、結城がただ言ってるだけだろ? 城井本人にちゃんと聞いてみろよと。


千沙が、その家庭環境から浮気という行為を嫌っていて、生理的に受け付けないことも俺は知っていた。

だからおそらく、今は『自分の恋人が浮気をしたのかもしれない』と言う仮定で思考回路が混乱しているのだろうと言うことも。


――ねぇ、木原。どう、思う?


何も言わない俺に焦れたのか、縋る色を千沙が強めた。

その瞳に呑まれたように気づけば唇を動かしていた。

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