不思議電波塔



 小説を書きながら、ずっと考えていたことがある。

 由貴はそれを口にしてみた。

「四季、ユニス描かない?」

「え?」

「俺、小説書きながら、これは挿し絵をつけてもらうなら四季の絵がいいなって思ってた。ダメ?」

 四季は一瞬戸惑った表情になったが、微笑んだ。

「いいよ。──じゃあ今日読ませて。今から由貴の家取りに行く」

「今日?明日持ってくるんじゃだめ?」

「ううん。今日がいい。読みたくなったから」

「えー…。この寒いのに四季連れ回して風邪ひかせでもしたら、俺困るんだけど」

「苳夜くんのところも大丈夫だったから、由貴のところも大丈夫」

「場所の問題じゃないと思うんだけど…。ほんとに疲れてない?大丈夫?」

「うん。大丈夫」

 四季はいつになく元気だ。苳夜の部屋でも目新しいものに触れて楽しそうだった。

(四季が楽しそうだからいいか)

 由貴は考えて、自分もいつになく楽しい気持ちになっていることに気づく。

 自分が書いている小説を読みたいと言ってくれる人がいるなんて思ってもみなかった。



     *



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