不思議電波塔
今までになくすっきりとした調子で話しかけてくる尾形晴が、寄生している尾形晴には楽しいことのように思えた。
「お前さ、何でそんなおとなしいんだ?いつもそんなふうにしてりゃ、存在感も薄くもならねぇのに」
『存在感の薄さは人間的な価値も低いとでも思ってるの?無駄にうるさい人間は多すぎるくらいだよ。もう少しみんな落ち着いていてもいい』
「年寄りか、お前は」
『そこで固定観念で物を言うの?落ち着いているのが年寄りだとは限らないんじゃない?』
「じゃあお前は自分のことをどう認識してるんだよ」
『さあ』
「お前ホントつまらん人間だな」
『自分について考えて楽しいことなんてないよ。自分は自分でしかないんだし。君は自分のことが好きなんだね』
「好きだね」
『やっぱり。僕、自分に興味ないから』
「お前おかしいだろ」
『おかしいかな?』
「おかしい。つーより、お前凡人に見えて、違うだろ。実は変だろ」
『変か…。どうでもいい。お腹空いた。ご飯食べよう』
自分のことは投げ遣りにそんなことを言ってくる尾形晴に寄生している方は笑ってしまう。
「お前、マジおかしいから。あーやばい。お前のことうっかり好きになりそうになった。やばい。嫌いだからな」
『僕も君よりご飯が好き』
「お前最低だろ。絶対そうだろ」
『君よりましだから』
「ううわ。絶対サイテー。キモイお前」
『言葉遣いが汚い人は汚い性格になるよ』
「説教か。キーモーイー。マジでー」
『言葉って何だろうね。君みたいに自己主張が強い人だけが結局正しいような理屈って、違う気がする』
「お前何言ってんの?発言しないよりも発言した方が強いのは当たり前だろうが」
『それは違うよ。君みたいに力ずくのやり方をすれば、根底では誰の賛同も得られないという話。少なくとも憧れるような類いの強さではないよ。むしろ最弱の類いの強さだ』
「──なかなかムカつくこと言うね」
『最弱だと言われたから?強いか弱いかの価値基準しかないの?君の中には。その基準しかない人間は虚しい人間になるよ。一見して弱く見えるものに価値を見出だしたことなんてないんだろう』