年下の不良くん

「……誰なんだよ…」

低くドスの利いた声で睨む、翔くん

私は気付かれないように、小さく息を吸い込んみ、何度も頭で復唱した言葉を発した

「──私、婚約したの、父の政略結婚で
元々、決まってた事なの
だから、“清水くん”と付き合って、それの練習台にしようと思ったの
だって、私、年下とかもともと興味ないから」


──嘘、嘘、嘘、全部が嘘

……まだ、まだ泣くな…!!

ここで泣いたら計画が全て台無しになるんだらっ…!!

グッと握り拳に力をいれる

「まぁ、言っても、貴方と彼は正反対のタイプだから、全然役にはたたなかったけど」

ハッと父の真似をするように鼻で嘲笑い、聞いてるのか、聞いていないのかわからない彼に続けた

「だけど、良い暇つぶしにはなったかな」

止めの一言を述べて、私は彼に背を向け、

「今後一切、私に関わらないで」

そう冷たく言い放ち、その場を後にした

その時、後ろから彼に名前を呼ばれたが、振り返ることなく歩いた


……だって…もう、その時には、涙が流れてしまっていたから…



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