地球の三角、宇宙の四角。
「アンタが受けようとしている手術はロボトミー(前頭葉切断手術)とはまたちがうかもしれない」

彼の話は続く。

「ロボトミー手術ってのはな、眼窩からアイスピックを打ち込み、額の裏側にある神経をブッちぎるんだ」おじいさんの指が私のオデコをつついた。

「がんか?」

「目ん玉が収まってる穴だ。キンタマじゃぁねぇぞ? かわりにキンタマ入れちゃったらね、うーん。見えない! ってバカヤロウ!」

「は、はい……」

「でな、アメリカで10万人に施されたわけだけどな、症状を改善された例は一例もない! もちろん今はどこもやってない」

「一例もないのに10万人も手術をしたのですか?」

「ああ、一時的によくなるケースもあるにはあった。だけど今、ロボトミー手術がこの世から消えた。術後みんな植物状態になり廃人になった。電気ショックもそう。向精神薬はどうだ?」

クスリについて考えてみた。このおじいさんも強いクスリでもやっているのだろうか、だからこんなにも速くなってるのか、そんなことを考えていると、いつの間にか、会話をしてしまっていることに気が付いた。それも、もの凄く自然に。

いつからだろうか、いつから会話を再開させたのか。嫌悪感しか無かったし、哀れみすら感じていたのに、なのに今はこの人は昔から知っている気がするというような信頼感すらある。この人何者なんだろうか、いつ、どこであった誰なのだろうか?





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