地球の三角、宇宙の四角。
席を見ると、わかりやすいぐらいに女性はそっぽを向いており、男性は謝りながらどうにか状況を立て直そうとしているのがわかった。

「俺にはリッコしかいてないねん。ごめん。チンコとか、そんなんほんまはどうでもええねん」

結構大きな声で。

女性はそっぽを見たままだ。

機械仕掛けのように限定パフェをクチに運ぶ。たしかに美味い。かなくんもライン工のような手つきで皿の上のものをテキパキと切り分けてクチに運ぶ。それ以外の全神経パラメータは、すべて隣の一挙手一投足に振られた。

「でも、リッコとチンコのどっちが大事かて、それちょっと迷うで? 違うか? 実際チンコなしになったら次の日から、いやその瞬間から俺、違っていくと思うねん。
だんだんな、おばちゃんみたいなものの考え方になって、おばちゃんみたいな顔になると思うねん。リッコはそれでもええのんか?」

女の顔が少しだけ変化した。かなくんの顔も神妙になり、その後少しだけ頷くように揺れた。

「かなくん? かなくんはどう?」と聞いてみた。

かなくんはナイフとフォークを置いて優しい顔で答えた。

「はゆみが傍にいて、俺だけを見てくれるのなら、俺はなんだってするよ」

そして、続けて言う。

「だけど、たとえば俺に何もなくなって、はゆみが俺のことを、どんな風に見るのかという、そういう風なことを考えると正直こわいね」

この人は正直だなと思う。

何かをあきらめたような表情をし、口元は静かに笑ってハンバーグを小さく切ってクチへと運んだ。その動作をじっと見ていると小さな一切れを私のクチの前に持ってきて、私は首を振った。











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