地球の三角、宇宙の四角。
統合失調症なう
「これは脳の断面なんですが、ここと、ここの影になっている部分。奥の方でハッキリと映ってないのですが、腫瘍です」

腫瘍? 癌?

母は真剣な顔で頷いている。母が真剣な顔になると目の下に斜めに線が入ったようなシワが出て陰が出来る。前にも母のこの顔を何度か見た事がある。

「この腫瘍が悪性であるのかどうかは今の段階で、わかりません。ですが、腫瘍の成長スピードを考えると一刻も早く取り除くことをお勧めします」

「先生お願いします。手術はいつやって頂けるのですか? その手術はあぶないものではないのですか? 先生! お願いします! 娘を助けて下さい。 お願いします」

母が詰め寄るのをぼんやりと眺める。頭が痛むのは腫瘍? この医者になにかを聞きたいとは思うけど、うまく言葉を拾えない。どうしちゃったんだろうか? 

「表面にある腫瘍は比較的取り除くことは簡単なのですが、ここまで奥の方にあるのは、正直、経験がありません。全力は尽くしますが、保証は……」

課長は目を真っ赤にして、うつむいて黙り込んでいる。

「手術以外に直す方法はないのですか?」
ぼそぼそと課長が訊いた。

「悪性ではなく、痛みもないのであれば放置して暫く様子を見ることも出来ますが、僕個人としてはお勧めしません」

「なんでですか? 手術は失敗するかもしれないのでしょう?」
声を荒げる課長の顔は、くしゃくしゃになっている。

それを他人事のようにぼんやりと眺めている。



< 79 / 232 >

この作品をシェア

pagetop