夏とおじさんとアイスクリーム
「キイチ我慢して家に帰ろうか。」
家に帰れば飲み物もあるが一度帰るという事は、今日は公園での遊びは終わりだという事を意味している為にキイチは、当然聞いてくれなかった。
公園での遊びを放棄するのは、敵前逃亡と同じだと言わんばかりに厳しい顔をして僕に、言った。
「おいちゃんがお金持って来てないのが悪いでしょう!
おいちゃんなんとかしてよ!」
キイチの言うとおりだった。
普段北朝鮮に対してやアメリカに対して怒りの言葉をあげているちょっとだけ右翼思想のおじさんとした事が敵前逃亡などとは、自分自身が情けなくなった。
キイチが笑いながら言った。
「おいちゃんがアイスになればいいのに。」
キイチは、明らかに僕をからかっていたが僕は、気軽に答えてしまった。
「おいちゃんの指からアイスでも出たらなぁ。」
その言葉が僕の人生を変えるとは、この時には全く思っていなかった。
仕方ないので公園の水道でキイチと水を飲んだ。
これは、ママには、禁じられてる行為だったが敵前逃亡だけは避けたい僕は、最後の手段を使った。
なぜ禁じられてるかと言えば今は、こういう水道で生水を飲ませないらしいのだ。
幼稚園にも浄水器が付いているとの事だった。
恐ろしい時代だと思いながらも僕は、キイチに絶対ママに内緒だよと何度もお願いした。