こわれもの

アスカは悩んだ。

このままここで、ヒロトを待ち続けるべきか。

それとも、ヒロトのアパートまで足を運び、マツリのアドバイス通り、ヒロトに想いをぶつけるべきか……。


どちらを選んでも、悲しい未来が待っていそうな気がする。

なぜそう考えてしまうのかは分からないけれど……。


今日、何度目になるのか分からないケータイ操作をし、ヒロトの番号を表示した。

突然訪ねたら引かれそうな気がするので、アパートに行く前に電話をかけることに。

それで出てくれなかったら、メールをしてからアパートに行こう……!


爆発しそうな心音を抱え、アスカはヒロトに電話をかけた。

やけに大きく響く呼び出し音が不安をあおる。

緊張の甲斐もなく、ヒロトは電話に出なかった。


《今日、急用か何かあった?

今までずっと待ってたんだけど、さすがに心配だよ。

今からアパートに行くね》

そう入力し、ヒロトにメールを送った。


実際の量より重たく感じるトートバッグを片手に、アスカはヒロトのアパートに向かった。

その足取りには、今朝駅に向かった時の軽やかさはない。










■疑心、幸福、予兆 終■

< 156 / 214 >

この作品をシェア

pagetop