大好きな変な家族たち。◆


「志保は、どうしたい?」


父が優しく包むような甘い声で志保に問いかける。


ちょっと胸がちくりと痛む。


もちろん、
柳瀬川の長女としての立場や、
『政略結婚』のメリットも重々承知だ。



「…私…」

言葉が詰まる。


「私。よくわからない。

 正直、恋愛も良くわからないし、
 
 このままお見合いして結婚して新しい業務提携が
 上手くいけば良いなと思うし、

 でも、私は、好きでもないし良くわからない人と結婚は…


 わからないの。」



わからない。という素直な気持ちをストレートに伝えたが、
父はいつもと変わらない優しい笑顔を私に返した。
< 30 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop