桜の咲く頃に
 9日午後1時半頃、桜木県桜庭市大字鳥越の市立桜庭高校から「生徒が屋上から飛び降りようとしている」と119番通報があった。救急隊が駆けつけたが、生徒は同1時40分頃飛び降り、校舎前駐車場のアスファルトの地面で頭部から血を流して倒れていた。生徒は病院に運ばれたが、頭を強く打っており、間もなく死亡が確認された。桜庭署は生徒が自殺を図ったものとみて調査を進めている。現場から遺書などは見つかっていない。
 同署の調べによると、この生徒は同校2年の男子(16)で、4階建て校舎の高さ1.5メートルのフェンスを乗り越え、約15メートル下の駐車場に飛び降りた。
 学校側の説明によると、この日の5時限目は、校舎屋上で美術の特別授業が行われていた。屋上の端に立った男子生徒に気付いた担当教諭が、金網のフェンス越しに生徒の制服をつかんで説得を試みたが、生徒は振り切って飛び降りたという。
 会見した松岡文典教頭は「いじめや病気などの悩みがあったとの報告はなかった。自殺の動機に全く心当たりがない」と話している。

 1年前の記憶が、走馬灯のように阿梨沙の脳裏を駆け巡った。
 あたしに巡り会えたことだけで、生きててよかったとか言ってたくせに……どうしてあたしを置いてったのよ? あたしにもあなたしか心許せる相手いなかったのよ。
 阿梨沙は悲しみに打ちひしがれた。

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