右手に剣を、左手に君を


不意に身体に力がわく。


痛みを押し殺して、上体を起き上がらせた。



「ぐ、ぁ……っ!」


「バカ、無理すんな!
お前、死にかけたんだぜ!?」



我慢しきれない痛みが、悲鳴になり、汗になる。


……でも。それでも。


俺は、起きなくちゃ。


立ち上がって、走らなきゃ。


彼女の元へ……。



「う、ぐ、ぁ、ぁ……っ!」


「コウ!」


「手を……貸してくれっ、健太郎……!」


「ちょっ、無理だって!
おぉい、雅ぃ、ババ様ぁ……!」



怪我人を気づかう健太郎は、助けを呼んだ。


するとすぐ雅とばあちゃんが現れる。


二人は両手に食べ物や薬箱を抱えていた。



「恒一!」


「止めてくれよ、雅ぃ~っ!

こいつ、アホだ!」


全員が、立ち上がろうともがく俺を止めようとする。



「行かせてくれ……!」


「恒一!どうした、落ちつけ!」


「行かせて、くれぇぇ……っ!」



渚の元へ。


伝えなきゃいけないんだ。


忠信の、気持ちを。


お前は孤独なんかじゃないって。


今度こそ、俺が守るんだって。


やっぱり俺は、君が好きなんだって。


早く、伝えたいんだ。


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