最初で最後の恋文
「ほれっ。これが一年分の写真。」

真琴は担任から一年間の写真が入った箱を受け取ると職員室を出た。
 
ジャンケンの結果、真琴が負けた。
 
真琴はため息を吐き、階段の角を曲がると階段から上がってきた人とぶつかり、写真をバラ撒いてしまった。
真琴はぶつかった人の顔を見ずに謝りながら、急いで写真を拾い始めた。
すると、真琴の上から短いため息がしたと思えば、真琴の前に黒い学ラン姿の男の子がしゃがみ込んだ。
真琴はしゃがみ込んだ男の子に目を向けると、その子は同じクラスの佐伯遥斗だった。

真琴は遥斗と同じクラスであるが、しゃべったことがあまりなかった。
遥斗はほとんど学校をサボっていて、学校に来ても一人でいることが多く、誰かと話している姿をほとんど見たことがなく、近寄りがたいタイプだからだ。

遥斗はだるそうに真琴がバラ撒いた写真を拾い、黙った真琴に渡した。

「ありがとう…。」

遥斗から写真を受け取り、真琴は遥斗にお礼を言ったが、遥斗は真琴の言葉を無視して職員室に入っていった。

「何、アイツ。」
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