緑の君~白い影~Ⅱ
紅鳥籠
寒い…。ここは何処?




「ここは夢の中…。巫女様、早く起きて…。」






女の子?
とても綺麗な日本人形のように…。
でも瞳は…。綺麗な紫。





「貴方は…?」






にっこりと微笑んだ少女。
「いつも貴女を見ていました…。私のことを気にかけてくれてありがとう、さゆり様。」





さわさわと音が響いた。
女の子の髪が伸びる。
紫の花びらが舞う…。





「藤の?」






「私は…。藤に宿りし精霊。かの地は選ばれた…。」





「学園のこと?」






「早く起きてさゆり様。」





「貴女は?」






「私の名はない…。私は…藤乃…。フジノ…。あなた様に貰った…。」






それきり消えてしまった。






「早く起きて…。ここはいけない…。ここは…。」





此処は…。何処?






赤い翼の天使。
天使にはあらず、赤い翼の妖し。
敷き詰められた赤い羽根に埋もれて眠るは巫女…。





「漏れ出る力は私の全てを満たす。クックッ…。」





夢…。それは悪夢。
魂は捕らわれた。赤い鳥籠の中で眠る。






藤の花びらが唯一の希望。





それを白い影と緑の煌めきが追っていた。






******






「スーリア…。太陽の血を受け継いた月の巫女…。」






森を駆け抜けながら聞いた。
「さゆりは…。」






「その内…。目覚める。」





そう…。いつか俺には届かなくなる。
だとしても…。今はまだ…。





「それでも助ける…。」





「ふっ…。健気だねアキラ…。」





藤の香りを追って行く。





さゆり…。さゆり…。さゆり…。
何処にいる?!






緑の君!






藤の花びらが見えた。
見えたのは仄暗い祠。





「山神か?」





「そんな大層な奴じゃない。アキラ…。」





結界を破壊した。
「さゆり!」





何に変えても…。君を守ると…。誓ったんだ。





結界の破壊は赤い翼の妖しに侵入を気づかせた。




「迷宮に入ったか?」
赤い羽根が舞い散る。
その手に白く細い体を抱えて。






< 21 / 27 >

この作品をシェア

pagetop