四魂 ~sikon~
責任感が強くて、弟思いで、面倒見がよくて、律儀で、協調性があって、目上の者には従順で・・・。


本当に兄さんは絵に描いたような優等生なんだ。


人には「クール」とか「頭がよくて性格もいい」とか「かっこよくて歌もうまい」とか・・・


色々言われるわけだけど、あれでも精一杯だと思うんだよね。

自分を省みる時間なんて作ってないと思う。

余裕があって大人な雰囲気を持ってるけど、僕からしたら普通の高校生だと思ってるよ。


でも本当に、なんていうか・・・

あのまま青春なんて味わう暇なく学園生活送っていっちゃいそうで、僕は不安だよ?

きっと来年には、全校生徒の期待通りに生徒会長になっちゃうんだろうな。

周りを気にしているわけじゃないだろうけど、自然と周りの期待に応えちゃうのが兄さんなんだよ。



それできっと、色んな役割を一人で背負っちゃうんだ。

作詞も、作曲も・・・

文化祭実行委員とか、いかにも率先してやりそうだし。


「はぁ・・・」


麗はそんな兄を思いながら、騒がしい教室の中で一人ため息をついた。

数学担当の教師が出張のため、今は自習時間。

だが、自習だと言われてプリントを配られて、素直に勉強に勤しむ高校生など何人いようか。


ねぇ、兄さんわかってる?

こんなに僕が心配してることを。


ボーっと麗が窓の外を眺めていると、一人のクラスメイトが話しかけてきた。


「なぁ、麗?どうしたんだよ。」


「え?別に~・・・」


堅物で恋愛に縁がない兄貴のことを考えていただけ・・・。


「なぁ、お前さ、隣の姉妹校の女子高の子と付き合ってるってホントかよ。」


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