とある真夏の物語【完】


そう思った瞬間、じわりと涙が目に浮かぶ。




…な、泣いちゃダメだ…




『…っ…』





頭ではそう思うのに、なぜだか涙が止まらない。





後から後から流れてくる滴を私は、ただ拭うことしか出来なかった。




『…シュカ…下がれ』





リュウは、そんな私を数分間見つめた後、シュカさんにそう言い放つ。





『かしこまりました』




ニコッとかわいらしい笑顔で微笑むとシュカさんは、部屋から出ていってしまった。





ただでさえ広い大広間に私とリュウだけが取り残される。





『…泣くなよ』





困り果てたように私に近づいてきたリュウは、私の涙をそっと指で拭う。





ドクン




その瞬間、リュウのそのさりげない仕草が誰かに重なって見えた。




< 42 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop