冬の花

長い夏休みが終わり、二学期が始まった

「ふぁー。」

全校生徒が体育館に集められ行われる始業式の長い先生の話に、流石の私も欠伸をしてしまう。
前の席の美咲に至っては完全に眠っているようだった。

ふふっ、かわいい

控えめに微笑み、私を視線を先生に戻した。

それから数分たち、そろそろ先生の話が終わるという頃に
ふと、息苦しさに気づく

なんか体が熱い・・・。

桜木坂高校の体育館は広いが、まだ暑い日が続く9月上旬
こうも人が密集していると熱も必然的にこもりやすくなる

「はぁ、はぁっ・・・。」

汗が流れて呼吸が荒くなり、目の前がだんだんぼやけていく

熱い、寒い、苦しい・・・・。

思わず前のめりになり、胸元を掴んでしまう

「冬花どうした?」

右隣に座っていた桜木くんが異変に気付いたのか、
左手を私の背に沿わせ、顔を覗き込んでくる

「すごい汗。顔色も悪いし、一旦外に出よう。」

私が頷く代わりに目を伏せると、桜木くんは近くにいた先生に声をかける
それから、彼の背におぶわれて外へ出た

体育館の外は中の比ではないくらい暑くて、目がチカチカ、ぐらぐらするが
彼のシャツからふわりと香る香りに少しばかり気が落ち着く気がして、頬を背に摺り寄せ目を閉じた

揺らり揺られてやっと涼しい場所につくと、桜木くんの背からベッドに下ろされる
保健の先生も始業式にでているため、保健室には誰もいなかった
そよそよと吹くエアコンの風に体の熱が徐々に引いていく感覚がして、一息つく

「大丈夫か?熱は・・・。」

桜木くんが振り向きこちらを見たと思ったら、顔が近づき額と額がぴったりとくっつく

ち、ちかいっ
さ、さくらぎくんのかおが・・・。

突然の出来事に私は固まり、先ほど感じていたものとは違う熱に侵される
おそらく私の顔はゆでだこのように真っ赤であろう

「うーん、すこし熱い気もするな・・。」

それは桜木くんの顔が目の前にあるからっ。

「さ、桜木、くん・・・。あのっ・・・。」

私はまっすぐ彼の目を見ていられず、俯くと
そっと桜木くんの顔が離れていく

「ちょっと待ってて、氷嚢か何かないか探すから。」

「あ、ありがとう・・・。」

恥ずかしくて顔上げられない・・・
あんな近くに桜木くんの顔があったなんて

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