冬の花

弾き終わると拍手が鳴り

すごく恥ずかしかった


でも、皆が笑顔になってくれたから
弾いてよかったと思った



あの人が来るまでは・・・


「随分幼稚で可愛い演奏だこと。」


ふわふわのチェリーブラウンの
長い髪をなびかせながら

音楽室の入り口に立ち
クスクスと笑う女の人




美咲の顔が強張る


「その言葉、どういう意味ですか?
朝倉(あさくら)先輩。」


怒りを露にし、微笑む


美咲が怒ると怖いんだよね

だけど・・・。


「そのままの意味ですよ、
花園さん。」


先輩は全然怯まない。


彼女は三年の朝倉 姫夜先輩
    (あさくら ひめや)


この学校で一番のお嬢様らしいのだけれど

いい噂を耳にしたことがなく



美咲と、もの凄く仲が悪い。




基本誰にでも優しい美咲が

唯一最初から毛嫌いしていた人物だったのを


私はよく覚えている


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